DEEP SEA'S RAINBOW
Animation & Director : Makiko Sukikara
Photography & Writer : Kohei Matsumura
Music : Nobukazu Takemura
Sound Effects : Masaya Kitada
Voice : Misako Yabuuchi
Voice Recording : Kentaro Imai
Special Thanks : Yoshihiro Fujiwara (JAMSTEC)
2019
NTSC 16:9 (4K High Definition)
Color, Stereo
10min.56sec.
Support : Media Arts Creators
Myth of the Sperm whale and the Giant squid To be sunk in meditation and to imagine something in mind resemble feeling to swim toward the deep-sea. There are perfect loneliness and eternal darkness without time and space. Animation work "Deep-Sea's Rainbow" is a myth of the deep-sea. In other words, it is Love beyond species that is talked in Greek mythology. It is a theory of oceanic life that is not allowed for us to be present. We know well that a sperm whale dive to the deep-sea to prey on a giant squid. It is said that the ability for diving exceeds 2,000m. In the deep-sea where there is no light, a sperm whale grasps the position of a giant squid clearly by echolocation, a giant squid catches the movement of a sperm whale with the biggest eyes in the world. These are facts supposed by the biologging study and dismantling investigation into sperm whale. In January, 2013, the Human encountered the giant squid in the deep-sea for the first time. The kraken that is talked in science fiction has gone to darkness of the deep-sea. Our miraculous encounter was 23 minutes. Cycle of the life in the deep-sea don't stop to attract us as well as a mystery of the space.
マッコウクジラとダイオウイカの神話 物思いに耽り脳内で想像を巡らせることは、深い海の底へ潜る感覚に似ている。 そこには安らかな孤独、そして時間と空間を剥奪された永遠の闇が広がっている。 アニメーション《深海の虹》は深海で起こる神話や奇蹟を描いた作品である。 それはギリシア神話で語られるような種を越えた愛であり、 私たちが未だ立ち会うことを許されない生命の営みである。 マッコウクジラがダイオウイカを捕食するため、深海を目指して潜行することはよく知られている。 その潜水能力は悠に2,000mを越えると言われている。 太陽の届かない深海では、マッコウクジラはエコロケーションによる聴覚だけでダイオウイカの位置を正確に把握し、 ダイオウイカは生物界最大の眼でマッコウクジラの動きを捉えている。 これらはマッコウクジラのバイオロギング研究と解体調査などから推測される事実だ。 2013年1月、人類は深海で遊泳するダイオウイカに初めて遭遇した。 それまで空想でさえ語られていたクラーケンの姿は、23分間の邂逅の後、再び深海の闇へと消えて行った。 深海における生命のサイクルは、宇宙の神秘と同じく原始以来の未知なるものとして今尚、私たちを惹きつけて止まない。 惑星が誕生あるいは消滅する瞬間には莫大なエネルギーとともに光が放たれる。 光は粒子や波であると同時に生命が存在していることの証である。 闇に包まれた世界の生き物たちは、自ら光を発するか発光バクテリアと共生することで光を得ている。 それは暗闇で生命活動を維持していくために生まれ備わった知恵である。 昼白の下でも多くの物質は冷光と呼ばれる目には見えない微弱な光を発しているという。 私たちは光の中では光の存在に意識的ではない。 生命エネルギーは可視不可視を問わず光へと変換されている。 本作は類推と想像によって、深海と天体を繋ぎ生命の神話へと紡がれたものである。 マッコウクジラが太陽を飲み込むとき、それは夕暮れをもたらし、 その光がダイオウイカへ贈与されるとき、それは受精のメタファーとして描かれ、 マッコウクジラが月夜に円環の虹を架けるとき、それは生命の誕生を祝福する神話素となる。 マッコウクジラの胃の中で発見されるダイオウイカの死骸は、消化されることのない愛の残滓である。 「一つしかない地球を維持するために宇宙がある」これは或る数学者の言葉である。 科学の進歩と研究者の熱意によって、これからも様々な謎が解き明かされていくだろう。 しかし神話や民話は色褪せることなく、私たちは夜ごと物語り続けるだろう。 ニュートンが虹のスペクトルを発見しても、アポロが月へ到達しても、 私たちは空に架かる虹に立ち止まり、月を眺め死者を想い星に祈りを捧げている。 知性と情緒の絶え間ない往復こそ人の持つ叡智である。 2015年3月12日 松村康平